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不快な症状(イライラ、指先や足先の冷え等)がすべて交通事故のせいと主張することのデメリットについて

今回の記事はちょっと長めです。ですが、非常に大事なことを書きましたので、ぜひ最後までお付き合いください。

さて、例えば、追突事故などに遭って首を痛めたとしましょう。

頸椎捻挫、いわゆる「むち打ち症」ですね。

それがきっかけで、「首が痛い」とか、「頭痛がする」、「手がしびれる」といった症状であれば、それはむち打ち症でよくある症状なのですが、それだけでなく、「わけもなくイライラする。」「指先や足先の冷えが酷くなった」「動悸がする」「眠れない」、「常に体調がよくない」などといった様々な症状を訴える方がいます。

検査をしても、そのような症状が出る客観的な医学的所見は得られない。

けれども、被害者本人はこのような不快な症状はすべて事故が原因だと思っている。

そこで、納得できる診断をしてくれる医師を探して、いくつもの病院をめぐる。

そして、この事故を起こした加害者側に「納得できる賠償金を支払え」と迫る。

では、このような被害者には、後遺障害等級が認定されて、相手方の保険会社から納得できる賠償金が受け取れるでしょうか?

結論を先に言いましょう。

答えは、No!です。

後遺障害等級は14級9号の神経症状さえ認められないですし、当然、納得できる賠償金など支払われるはずもありません。

事故に遭って、現在同じような症状で苦しんでいる方がこの記事をお読みになっていれば、「理不尽だ」、「そんなことが許されていいのか!」と憤慨するのも無理はありません。

被害者が辛い思いをしているのはよく分かります。嘘を言っているとも思いません。

しかし、これが交通事故に限らず法律の世界の現実であり、まずはその現実をしっかりと受け止めて欲しいのです。

考えてもみてください。

事故に遭って十分に辛い目にあっているのに、さらに十分な補償も受けられなければ、まさに「踏んだり蹴ったり」ではありませんか?

ですから、そのような最悪な事態にならないようにするためにはどうしたらよいのか?

今回、私がお伝えしたいのは、まさにそこなのです。

まず、先ほど述べた「わけもなくイライラする」、「指先や足先の冷えが酷くなった」などという様々な症状は、検査をしてもその原因がはっきりと分からなければ、そのような症状は一般に「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と呼ばれています。

そして、そのような不定愁訴は、基本的に交通事故とは直接関係がないもの、法律用語で言えば、「相当因果関係がないもの」とされているのです。

ただ、交通事故に遭えば、怪我の痛みやストレスで体調を崩すであろうことは十分に考えられますので、そのような症状が出ること、それ自体は何らおかしいことではありません。

しかし、そのような症状を長期間に渡って主張し続けて、さらにこのような症状が「事故のせいだ」と執拗に主張していると、相手方保険会社からは手痛い反撃を受けてしまうことになります。

まず、検査をしても原因がはっきりとしない様々な症状については、事故との相当因果関係を否定されて、治療費や慰謝料の支払いを拒まれます。

そればかりか、むち打ち症であれば、通常は認められる首の痛みや頭痛、手のしびれといった症状でさえ、これらの症状が悪化した、もしくは改善しないのは、「被害者の精神的な問題だ」と主張され、後遺障害の存在を否定するばかりか、賠償金自体も減額されてしまいます。

そうなってしまうと、被害者と相手方保険会社とでの話し合い(示談交渉)では解決するのは非常に難しくなりますし、裁判にしたところで、勝てる見込みは非常に薄いと言わざるをえません。(それ以前に、このような案件を引き受けてくれる弁護士さんをみつけるのも大変かもしれません。)

では、このような最悪な事態になる前にどう対処したらよいでしょうか?

まずは、検査をしても原因がはっきりしない症状については、一旦は「事故によるものだ」という考えを捨てて、原因が比較的理解されやすい、むち打ち症等の症状の治療に専念するということです。

ただ、誤解しないで欲しいのは、検査をしてもはっきりしない症状については「治療をするな」とは言っている訳ではありません。

「わけもなくイライラする。」、「指先や足先の冷えが酷くなった。」という辛い症状は、事故に遭った当初であれば、相手方保険会社の負担で治療してもよいと思いますが、ある程度治療をしても症状が改善しないのであれば、自費で治療をしたらよいのです。

相手方保険会社の担当者の方から、「その症状は今回の事故と関係ありますか?」

という疑問が投げかけられるような電話がかかってくることもありますが、そういった事情があればなおさら、保険会社の負担で治療を続けるのは得策ではないでしょう。

確かに、「事故がきっかけで辛い目に遭っているのに、自腹を切るのは納得できない。」とお感じになる気持ちも分かりますが、そこはグッと堪えてください。

治療費も健康保険を使って治療をすれば、その額も、「後々被る不利益に比べれば微々たるものだ。」と頭を切り替えてはいかがでしょう?

そして、むち打ち症等の症状については、まずMRI撮影検査等をして、痛みの原因をしっかり調べる。そのうえで、リハビリや服薬だけでなく、必要があればブロック注射などの症状を改善させる治療をしっかり行う。

それで症状が改善して、事故前に近い状態にまで回復すればそれでよいですし、残念ながら症状が残ってしまっても、後遺障害を認定してもらうことは十分可能です。

様々な症状を訴えなくても、むち打ち症等の治療にしっかり取り組んでいれば、治療費を削られることもありませんし、精神的な損害(慰謝料)についても十分考慮してもらえます。

さらに後遺障害等級が認定されれば、手元に残る賠償金も倍増します。

いかがでしょうか?

ちょっと頭を切り替えて、やり方を変えてみるだけで、同じ辛い目に遭っていても、全く結果が違ってくることがお分かり頂けたのではないでしょうか?

交通事故がきっかけで、原因がよく分からない辛い症状で苦しんでいる方は、一度ご参考にして頂き、スムーズな事故解決にお役立ていただければ何よりです。

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