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交通事故の治療中に、また事故に遭ってしまった場合(異時共同不法行為)の注意点

交通事故に遭って治療中に、また事故に遭ってしまった

このような事故は意外によくありますし、私のところにもよく相談が寄せられます。

たとえば、Aさんは、自動車を運転中に後ろから自動車に追突され、頸椎捻挫(いわゆる「むち打ち症」)になり治療中、最初の事故から3か月後に、自動車を運転中、別の自動車からまた追突され、さらに首を痛めてしまったとします。

この場合、最初の事故の任意保険会社がB社で、第二の事故の任意保険会社がC社であったとすると、B社は治療費の支払いを中止して、第二の事故の治療費の支払いはC社に引き継がれます。

ここまでは、何ら問題はありません。問題はここからです。

事故の治療がC社に引き継がれた後、B社は最初の事故について示談を申し込んできます。

そのとき、被害者Aさんとしては、B社と示談をすべきでしょうか?

第二の事故後も治療は続けているけども、症状はたいしたことがない。

このような場合であれば、示談してしまっても構わないでしょう。

しかし、第二の事故後、症状がさらに酷くなったり、改善しないような場合には、よくよく注意しなければなりません。

例えば、第二の事故後4カ月間治療を続けたけれど、なかなか症状が改善せず、有効な治療方法もないという状態になった場合、このような状態は「症状固定」といい、後遺障害等級認定の対象となります。

ところが、最初の事故について先に示談をしてしまうと、第二の事故は最初の事故とは全く別の事故と評価されてしまうのです。

すなわち、最初の事故の治療期間(3か月)と第二の事故の治療期間(4か月)は合算されないことになります。

すると、第二の事故だけの治療期間だけでは、後遺障害等級認定に必要な治療期間である6か月を満たさないことになりますね。

ですから、第二の事故に遭った時点では、すぐに最初の事故についての示談には応じるべきではないのです。

そうだとしても、最初の事故の治療期間を第二の事故の治療期間に合算できるのか?という点に疑問を感じる方もおられるかもしれませんが、それは可能なのです。

最初の事故と第二の事故の怪我が合わさって後遺症が残ったと言えるのであれば、このような状態は法的には「異時共同不法行為」とされ、治療期間は合算して法的評価の対象となります。

そして、後遺障害等級が認定されれば、被害者Aさんとしては、最初の事故の加害者に対しても、第二の事故の加害者に対しても後遺障害に基づく損害賠償請求が可能となります。

しかし、最初の事故について示談を済ませてしまうと、最初の事故の加害者に対してはもちろん、第二の事故の加害者に対しても後遺障害に基づく損害賠償請求ができなくなってしまうのですね。

ですから、このように事故の治療中に再度事故にあった場合には、最初の事故の任保険会社と示談する前に、必ず交通事故の専門家に相談することをお勧めします。

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