変形障害

骨折などによる脊柱の変形障害

交通事故によって骨が曲がってしまったり、折れた骨が不完全な状態でくっ付いてしまったりすることがあります。その際に、特に多い損傷部位が脊柱です。圧迫骨折や破裂骨折あるいは脱臼等により、脊柱が変形すると日常生活にも大きな支障を来してしまいます。そのため、治療をしても脊柱が元の状態には戻らないことが明らかになった場合は、変形障害として後遺障害を認められているのです。

脊柱とはどの部位か?

一般的に脊柱は背骨と考えて問題ありません。
ただ、後遺障害の認定上詳しく言うと、脊柱とは「頚椎」「胸椎」及び「腰椎」を指します。仙骨及び尾骨は含まれません。後遺障害認定の性質上、障害となる箇所の支持機能や保持機能、運動機能を見ています。そのため、これらの機能を有しない仙骨と尾骨は対象ではないのです。

頸椎と胸椎・腰椎はそれぞれ人体にとって異なる機能を持っています。障害等級の認定にあたっては、原則的に部位ごとに等級を認定していきます。

脊柱の変形障害の検査方法

脊椎の変形は圧迫・破裂骨折や脱臼以外にも加齢などによっても生じます。つまり、ただ単に脊椎が変形しているといった所見だけでは、事故との因果関係を立証出来ません。つまり後遺障害認定を受けられないわけです。だからこそ、X線写真、CT画像又はMRI画像によって圧迫骨折などの有無を医学的な観点から見る必要があるのです。

そのうえで、どれぐらいの変形が起きているのかをコブ法によって判断していきます。労災保険後遺障害診断書作成手引きによると、コブ法とはX線写真などにより、脊柱のカーブの頭側及び尾側において、それぞれ水平面から最も傾いている脊柱の椎体上縁の延長線と尾側で最も傾いている脊柱の椎体の下縁の延長線が交わる角度(側彎度)を測定する方法です。
変形の程度で3段階の後遺障害等級が設けられています。

脊柱の変形障害の後遺障害認定基準

後遺障害等級「第6級第5号」 障害の程度 脊柱に著しい変形または運動障害を残すもの
障害に関する具体的な説明

エックス線写真、CT画像又はMRI画像により、脊椎圧迫骨折等を確認できる場合で以下のいずれかに該当する場合

  1. 脊椎圧迫等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの。
  2. 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じるとともに、コブ法による側弯度が50度以上となっているもの。
後遺障害等級「第8級第2号」 障害の程度 脊柱に運動障害を残すもの(脊柱に中程度の変形を残すもの)
障害に関する具体的な説明

エックス線写真、CT画像又はMRI画像により、脊椎圧迫骨折等を確認できる場合で以下のいずれかに該当する場合

  1. 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じているもの
  2. コブ法による側弯度が50度以上であるもの
  3. 環椎又は軸椎の変形・固定により、次のいずれかに該当するもの。
  1. 60度以上の回旋位になっているもの
  2. 50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの
  3. 側屈位となっており、エックス線写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの
後遺障害等級「第11級第7号」 障害の程度 脊柱に変形を残すもの
障害に関する具体的な説明
  1. 脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
  2. 脊椎固定術が行われたもの
  3. 3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの

認定のためのポイント

なかなか表や言葉だけでは分かりづらいと思いますので、出来るだけ簡単に解説します。
「後彎」とは、簡単に言うと脊柱の背中側が大きくカーブしている状態です。そして脊柱が横に曲がっている状態を「側彎」と言います。

それを踏まえたうえで、脊柱の変形障害が後遺障害認定されるために必要なのは、まず、圧迫・破裂骨折や脱臼が生じている(X線写真やCT画像などで判断)ことです。そのうえで、

  • 損傷した椎体の個数
  • 損傷によって椎体の高さがどれぐらい減少したか
  • 後彎の発生状況
  • 側彎の角度数

以上が認定のためには欠かせない要素といえるでしょう。これらの条件から少しでもずれると、たとえ脊柱が変形していても後遺障害認定の要件上「脊柱に変形を残すもの」とはみなされないのです。

そのために、検査は厳密に行われなければなりません。場合によっては、X線検査やCTだけではなく、より詳細なMRI検査も行うことも必要です。
なぜなら、骨折等が軽微だと症状の見落しが起きてしまうことがあるからです。もし初診の段階でこのような不備があると厄介なことになります。後で骨折が発見されても、事故との因果関係の立証が難しくなり、後遺障害の認定に足かせとなるケースも存在します。たとえ、医者がX線写真で骨折の問題はないと言っても、違和感や納得がいかない場合はこちらから積極的にMRI検査をお願いしましょう。

変形障害認定申請における当事務所のサービス

脊柱の変形に対する後遺障害認定は、測定方法や検査方法が厳格に定められています。しかし、病院側では交通事故の後遺障害認定に関しては専門外のため、適切な診断書を書いてくれないことがあります。しっかりと診断書に「圧迫骨折」と書いてもらったり、後彎や側彎の角度をきっちり測ってもらったり、そういった一つ一つの積み重ねが認定に至るためには必要です。また、脊柱の後遺障害認定に不可欠な圧迫骨折等の有無ですが、画像でわかるものから、まったく判別できないものまでさまざま。MRI検査まですることで初めて事故との因果関係を立証できることもあります。

そのため、当事務所の強みとして、医学的見地からも診断書が適正かどうかを判断したり、医師との面談に同席したりすることも可能です。特にシニアの方は、事故前から骨粗鬆症などで脊椎に問題があったとして、賠償金が減らされることもありますので、事故前の症状、診療記録などをもとに丁寧な書類作成をいたします。一人一人の年齢や職業に応じて、治療の様々な段階で適切なサポートをいたしますので、お困りの際は是非ご相談ください。

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