めまい・耳鳴り・難聴

耳鳴り・難聴・めまいなどに関する後遺障害認定

頭部や頸椎などを強く打ったときに耳鳴り、難聴、めまいなどの症状を引き起こすことがあります。耳鳴りやめまいがあると集中力が落ち、聴力が低下するとコミュニケーションが難しくなり、日常生活に様々な不便が発生します。

そのため、交通事故においてこれらの症状が生じた場合には後遺障害が認められているのです。しかし、本人にとっては大変な症状でも耳鳴りやめまいは大きな怪我に比べて外から判断出来ません。だからこそ、少しでも違和感があればすぐに病院で様々な検査をする必要があります。医師のなかには、専門外の後遺障害認定のこととなると、どのような検査や手続きが必要なのかを知らない方も少なくありません。是非どのような検査があるのかを知って、きちんと医師に検査をお願いしましょう。

耳鳴りに関する後遺障害認定基準

耳鳴りとは、周りで音が鳴っていなくても、耳の中で「キーン」「ピー」「ジー」などの音を感じてしまう状態です。
検査方法としては、耳鳴りの音の高さと発生部位、音色を調べていく「ピッチ・マッチ検査」。そしてピッチ・マッチ検査によって得た周波数を用いて、耳鳴りの音の大きさを調べるのが「ラウドネス・バランス検査」です。
この二つの検査によって得た結果をもとに、耳鳴りに関する後遺障害等級認定手続きに必要な資料を作成します。

耳鳴りに関する後遺障害認定基準

後遺障害等級「第12級」 障害の程度 耳鳴りに係る検査によって難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できるもの
障害に関する具体的な説明

聴力障害には該当しない程度の難聴であっても、耳鳴りが存在するであろう周波数純音の聴力レベルが低下しており、著しい耳鳴りを常時残すことがピッチ・マッチ検査とラウドネス・バランス検査の検査により立証可能なもの。

後遺障害等級「第14級」 障害の程度 難聴に伴い常時耳鳴りのあることが合理的に説明できるもの
障害に関する具体的な説明

聴力障害には該当しない程度の難聴であっても、耳鳴りが存在するであろう周波数純音の聴力レベルが低下しており、常時耳鳴りがあることが合理的に説明できるもの。

耳鳴りの後遺障害認定ポイント

耳鳴りに関する後遺障害の認定ポイントは、「立証可能」と「合理的に説明」の二つがあります。「ピッチ・マッチ検査」や「ラウドネス・バランス検査」によって、科学的根拠が得られ、誰が見ても耳鳴りが発生しているという知見が得られたときは「立証可能」として、第12級相当(自賠責基準:93万円)に該当します。これはわかりやすいと思います。

問題は、この二つの検査によっても耳鳴りが立証出来ないケース。そんなときでもまだ諦める必要はありません。第14級(自賠責基準:32万円)の認定基準は、「難聴に伴い常に耳鳴りのあることが合理的に説明できるもの」。証明ではなく、説明であると書かれている点がポイントです。

合理的説明において重要なのは、交通事故後すぐに耳鳴りが起きた時や治療途中で生じた場合は、症状を訴え続けることです。耳鳴りの部位、耳鳴りの種類、耳鳴りの音の高低、澄んだ音かなどを医師に正確に伝えましょう。そのうえで、症状の一貫性を意識した細かな資料作成が必要となってきます。

聴力障害~難聴の場合~

難聴の認定に必要な検査は、「聞こえない程度はどのぐらいか?」「片方だけか?両耳とも聞こえづらいのか?」といったものです。

純音聴力検査について

オージオメーターという検査機器を使用して、ヘッドホンに流れる「ピー」「プー」という音を聞き取るテストをします。結果は、音の強さを表すdB(デジベル)という単位で判定。数値が大きければ大きいほど、聴力は悪いということになります。オージオメーターは健康診断などで利用することもあるので、体験したことのある方も多いかもしれません。

語音聴力検査について

スピーチオージオメーターという検査機器を使用して、ヘッドホンに流れる言葉を、左右の耳で聴き分けていきます。難聴が起きている部位を特定し、どの位の声をはっきり聞き取れるかの明瞭度を見ていくというものです。

聴力障害に関する後遺障害認定基準

後遺障害等級「第4級第3号」 障害の程度 両耳の聴力を全く失ったもの
障害に関する具体的な説明
  • 両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの
  • 両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの
後遺障害等級「第6級第3号」 障害の程度 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
障害に関する具体的な説明
  • 両耳の平均純音聴力レベル80dB以上のもの
  • 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ最高明瞭度が30%以下のもの
後遺障害等級「第6級第4号」 障害の程度 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
障害に関する具体的な説明 1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
後遺障害等級「第7級第2号」 障害の程度 両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
障害に関する具体的な説明
  • 両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
  • 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの
後後遺障害等級「第7級第3号」 障害の程度 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
障害に関する具体的な説明 1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの
後後遺障害等級「第9級第7号」 障害の程度 両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
障害に関する具体的な説明
  • 両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの
  • 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの
後遺障害等級「第9級第8号」 障害の程度 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
障害に関する具体的な説明 1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの
後遺障害等級「第10級第5号」 障害の程度 両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
障害に関する具体的な説明
  • 両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの
  • 両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のもの
後遺障害等級「第11級第5号」 障害の程度 両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
障害に関する具体的な説明 両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のもの

片耳の場合

後遺障害等級「第9級第9号」 障害の程度 1耳の聴力を全く失ったもの
障害に関する具体的な説明 1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの
後遺障害等級「第10級第6号」 障害の程度 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
障害に関する具体的な説明 1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上のもの
後遺障害等級「第11級第6号」 障害の程度 1耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
障害に関する具体的な説明
  • 1耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの
  • 1耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のもの
後遺障害等級「第14級第3号」 障害の程度 1耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
障害に関する具体的な説明 1耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のもの

難聴の後遺障害認定ポイント

語音による聴力検査は1回で済むこともありますが、純音による聴力検査は基本的に一週間(約7日)ごとに3回行います。そして、2回目と3回目の測定値の平均によって出た数値を「平均純音聴力レベル」と呼び、これが後遺障害認定の基準となります。

後遺傷害診断書には、この数値の記載とともに、すべての検査表(コピーした物)を添付しなければなりません。もし、両耳が難聴として後遺障害に認められれば、自賠責基準においては最大で4級712万円から最小で11級135万円の慰謝料を請求出来ます。

事故直後から耳の聴こえ方に少しでも違和感を覚えたら、必ず担当医にそのことを伝え、聴力の検査を行う病院への紹介状をもらいましょう。後遺障害認定の手続きは書面によることがほとんどなので事故との因果関係を立証するためには、必ず記録として残しておかなければなりません。

めまいに関する場合

めまいに関しては主に二つの種類があります。一つが「定型性めまい」です。末梢性障害、内耳性めまいとも呼ばれ、床が傾く、壁が倒れてくる、周囲が回転するといった感覚があります。もう一つが、「非定型性めまい」。中枢性障害とも呼ばれ、周囲が回転するのではなく、身体自体がふわふわと浮く感じがするといった不安定感が特徴です。

めまいに関する検査は一般的な視診、触診、体温、血圧、画像検査のほか、以下のような特徴的なものがあります。

  • 眼振検査

    めまいに関しては主に二つの種類があります。一つが「定型性めまい」です。末梢性障害、内耳性めまいとも呼ばれ、床が傾く、壁が倒れてくる、周囲が回転するといった感覚があります。もう一つが、「非定型性めまい」。中枢性障害とも呼ばれ、周囲が回転するのではなく、身体自体がふわふわと浮く感じがするといった不安定感が特徴です。

    めまいに関する検査は一般的な視診、触診、体温、血圧、画像検査のほか、以下のような特徴的なものがあります。

  • 迷路刺激検査

    温度刺激や電気的刺激などを身体に生じさせて、眼振の反応を判断します。

  • 平衡機能検査

    身体のバランス感覚を、片足、両足、目を開いたとき、目を閉じたときそれぞれで検査するというものです。

  • 聴力検査

    めまいの原因として、内耳に問題が発生していることがあります。そのため、聴力検査を行うと異常がわかるケースもあります。

めまいに関する後遺障害認定基準

後遺障害等級「第3級第3号」 障害の程度 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することが出来ないもの
障害に関する具体的な説明 生命の維持に必要な身の回りの処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のために労務に服することが出来ないもの
後遺障害等級「第5級第2号」 障害の程度 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することが出来ない
障害に関する具体的な説明 著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力がきわめて低下し一般平均人の1/4程度しか残されていないもの
後遺障害等級「第7級第4号」 障害の程度 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することが出来ないもの
障害に関する具体的な説明 中等度の失調又は平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の1/2以下程度に明らかに低下しているもの
後遺障害等級「第9級第10号」 障害の程度 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することが出来る労務が相当な程度に制限されるもの
障害に関する具体的な説明 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、且つ、眼振その他平衡機能障害検査に明らかな異常所見が認められ、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
後遺障害等級「第12級第13号」 障害の程度 局部に頑固な神経症状を残すもの
障害に関する具体的な説明 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、且つ眼振その他平衡機能障害検査の結果に異常所見が認められるもの
後遺障害等級「第14級第9号」 障害の程度 局部に神経症状を残すもの
障害に関する具体的な説明 めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能障害検査の結果に異常所見が認められないものの、めまいがあることが医学的にみて合理的に推測できるもの

めまいにおける後遺障害認定のポイント

めまいは交通事故当初から起こるだけではなく、しばらく経過してから急に発生することもあります。後遺障害を認められるためには、事故との因果関係を立証しなければいけません。つまり、事故から時間が経ってしまうと、それだけ立証が難しくなるというわけです。そのため、少しでも違和感があればすぐに病院で検査を行いましょう。

もちろん、めまいに関するすべての検査を受ける必要はありません。理想としては、検査を多角的に行っていくべきですが、数を増やせばそれだけ費用もかかってしまいます。「どのようなめまいの症状があるのか」「めまいが起きたとき、どれぐらい続くか」「ほかの症状(難聴・耳鳴り・吐き気など)も起こるのか」などを詳しく医師にお伝えしましょう。そうすれば、必要な検査を教えてもらえるはずです。もし、その際に嫌な顔をされたり、耳鼻科への紹介状を渋ったりしても、自分の身を守るのは自分なので諦めずに検査をお願いするようにしましょう。

めまい・耳鳴り・難聴の障害認定申請における当事務所のサービス

後遺障害認定において大切なのは、症状の軽い重いに関わらず、少しでも違和感があればしっかりと症状を担当医師に伝え、検査を依頼する積極的な姿勢です。
しかし、当事務所では今まで、どのような症状が後遺障害認定の対象なのかを知らず、保険会社や病院の言うことを信じ、結果として悲しい思いをすることになった方々をたくさん見てきました。

特に、耳鳴りや難聴はむち打ち症との兼ね合いで発症するパターンも多くあります。その場合、しばらく月日が経過してから耳鳴りが起きるため、交通事故との因果関係を見過ごしてしまう方もたくさんいらっしゃいます。また、むち打ち症は、整形外科や整骨院の分野なので、聴力検査を行う医院への紹介状を書くということまで考えの及ばない医師も残念ながら存在します。ほかにも、耳の欠損と酷状障害との兼ね合いなどのことを理解している医師は少ないのが現状です。
そのため患者さんの方でも、いつどのような検査が必要か、耳の欠損は丁寧に測定してくれているか、担当医がきちんと後遺障害認定のことをわかっているのか、きちんと見極める必要があるのです。

ただ、ご依頼主様は事故後のショックなどで、医師や保険会社と十分に対応出来ないパターンもあるかと思います。当事務所では、事故直後から相談いただける体制を整え、具体的な行動をアドバイスしながら、ご依頼主様と二人三脚で後遺障害認定を勝ち取ることを心がけています。

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